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6column『学術論文の技法』斉藤孝, 西岡達裕著. -- 新訂版. -- 日本エディタースクール出版部, 2005.所蔵館 配置場所  請求記号 資料ID 本部 一般図書 816.5/Sa25 11118283959『論文作法 : 調査・研究・執筆の技術と手順』ウンベルト・エコ著 ; 谷口勇訳. -- 而立書房, 1991.所蔵館 配置場所    請求記号 資料ID本部 一般図書   816.5/E19 11115165499本部 2階保存一般 816.5/E19  11115165507*このほか、学習センター図書室にも所蔵があります。本稿で取り上げた図書*版違いの図書も附属図書館等に所蔵があります。『学術論文の技法』の思い出青山 昌文大学院(文化科学研究科)人文学プログラム教授 論文の書き方をテーマとする書物は、現在多数出版されています。レポート程度の短いものを主として対象としたものや、理科系の論文の書き方に特化したものなどもあって、私が学生だった頃に比べて多種多様になっているのですが、しかし、私の専門の美学・芸術学、更には哲学、そして広く言って人文学の分野の論文の書き方の書物として、数ある類書の中で今でも比較を絶して優れているのが、斉藤孝・西岡達裕著の『学術論文の技法』(日本エディタースクール出版部)です。 斉藤孝という名前を目にすると、著作が極めて多数ある明治大学教授を思い浮かべる方がいらっしゃるかもしれませんが、この書物の斉藤孝は、同姓同名の別の学者であり、スペイン戦争などの20世紀の国際政治史研究で高名だった歴史学者です。 論文の書き方の専門家ではない、歴史学者が書いたこの『学術論文の技法』には、実は私の個人的な思い出があります。 そもそも何故歴史学者が論文の書き方をテーマとする書物を出版したのかと言えば、それは、自分が教える学生達に、歴史学の専門的学術論文の書き方を伝授したいという強い思いがあったからでした。斉藤教授は、パソコンはおろか、まだ、機械としてのワープロも出現していない時代に、「ガリ版」で数十頁の手書きの文書を自作し、学生に配布したのです。「ガリ版」とは、ロウ紙に、鉄筆でガリガリと手書きすることによって、自分が書いた文字部分だけがロウが削れてインクが通過するようになることを利用した謄写版印刷のことで、手書きの筆者の文字の字体のクセがそのまま刷り上がる手書き印刷です。 この斉藤教授の「論文の書き方」文書は、東京大学大学院の西洋史学の学生が修士論文を書くために役立つようにと執筆・印刷・配布されたものでした。私は、東京大学の教養学部と文学部の2つの学部を卒業しましたが、教養学部は教養学科フランス科であり、文学部は美学芸術学科であって、いずれも西洋史学科ではなく、また大学院も東京大学大学院美学芸術学科であって、西洋史学科ではありません。しかし、私の弘前高校時代の同級生が、東京大学西洋史学科の学生だったために、「参考になるだろうからお前にも1部あげる」と言って、そのガリ版の手書き印刷による「論文の書き方」を私にくれたのです。 そして、確かに、この斉藤教授の手書き印刷による「論文の書き方」は、西洋史学の学生ではない私にも、大いに役立ったのです。私は斉藤教授の人格が良く現れている手書きの文字の文書を熟読することによって、厳密な学の方法論を少しずつ身につけていったのでした。そして、この文書は、その学問的評判の高さの故に、そののち様々な形を経てますます充実してゆき、今日におけるような立派な書物として、今でも、日本における最高の文科系の学術論文の書き方の書物であり続けているのです。 外国における最高の文科系の学術論文の書き方の書物についても、最後に紹介しておきましょう。それは、映画にもなった小説『バラの名前』の著者であるウンベルト・エーコがイタリアの学生のために書いた『論文作法』(而立書房)です。記号論の現代思想で有名なエーコですが、元々は、中世のトマス・アクィナスの美学の研究で博士号を取得した美学者であり、『論文作法』は、極めて率直にして有益なアドヴァイスに満ちた学術論文の書き方の書物なのです。 『学術論文の技法』と『論文作法』の2冊をお読みになれば、文科系の学術論文が如何に厳密で緻密なものであるかが分かります。皆様も、是非、これらの2冊の書物をお読みになってみてください。26

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