リブナビプラス
30/46

7column28 長年、学問の府に身を置いて、私ほど図書館に通わない人間は珍しいでしょう。自分のアイデンティティは学者ではなく、臨床心理士というpractitionerだから、書物や論文よりも実践から学ぶのだなどと合理化しようとは思いません。図書館は知識と知恵のまさに宝庫で、不勉強な私には、書棚を眺めているだけで心の時空間が広がる気がすることがあります。放送大学に赴任して、小野けい子先生に図書館を案内していただき、チベットのすばらしい絵入りの古書を開いたときには心が震え、一生かけても図書館の蔵書が全部読めないのが残念だと嘆いていた学生のまなざしが脳裏に浮かんできました。 先日、図書館を利用して最新の情報を入手している学生が多いことに気づかされる出来事がありました。私の分野ではアメリカの精神医学会が出している「診断・統計マニュアル」が参照されることが多いのですが、最新版の訳書は重い(しかも高い)ので、私は購入しないでいました。しかし、あるとき、どうしても確かめたいことがあったので図書館に探しに行ったところ、すでに学生が借りていて、その次の学生の予約も入っていたのです。当分、入手できないでしょうと係の人は気の毒そうに言います。少し残念でしたが、やはり、この本は自費で買うべきだと心の中で呟きながら、学生諸君の向学心を嬉しく思ったことでした(本書は皆さんの利便も考えて、その後、あと2冊、図書館で購入していただきました)。 ご案内の通り、本学の図書館にはディスカバリーサービスという新しい検索システムが導入されました。図書情報委員として、私も少しは知っておくべしと説明会に出かけてみましたが、私の探していた論文はプリントアウトまでいたらず、なかなか要領を得ないままに終わってしまいました。しかし、参加していた学生の皆さんは、新システムに目を暉かせ、機敏に質問しては新たな技能をすぐに身につけていくようで、本当に感心しました。 私が大学生の頃は、データベースから論文を探すという手段はありませんでした。怠け者の私は、図書館に行って和雑誌の最近10年分くらいのタイトルだけを見て、関心を引かれる論文を少し読み、そこに記載されている引用文献にあたっていくという、いわば、芋づる式の文献検索法にたよっていました。コンピュータを駆使して著書や論文を探す方法を学んだのは、中年になってからです。初めのころは、キーワードを入れて検索ボタンを押すと、300編以上の英論文が、折りたたまれた幅広の紙に続々と打ち出されてきて、嘆息したのを覚えています。 現代の学生諸君は、書棚を眺めて学問の世界の高山や深海に想いをはせ、コンピュータの画面を通して広域の(しかも、いくらでも拡大できる)地図を入手するのでしょうね。このような状況では「青は藍より出でて、藍よりも青し」。皆さんの情報収集能力には脱帽し、私はその後の思索や実践のお手伝いができればと思っています。図書館でのひととき倉光 修大学院(文化科学研究科)臨床心理学プログラム教授『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』American Psychiatric Association [編] ; 高橋三郎, 大野裕監訳 ; 染矢俊幸 [ほか] 訳. -- 医学書院, 2014. 所蔵館 配置場所  請求記号 資料ID 本部 一般図書 493.7/D92 11118799447『精神疾患診断のエッセンス : DSM-5の上手な使い方』アレン・フランセス著 ; 大野裕, 中川敦夫, 柳沢圭子訳. -- 金剛出版, 2014.所蔵館 配置場所  請求記号 資料ID本部 一般図書 493.7/F43 11118790825 *2タイトルともに、附属図書館(千葉市)に所蔵があります。本稿で取り上げた図書

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です