ちりめん本が誕生した頃、ヨーロッパでは浮世絵の影響によるジャポニズム文化の最盛期でした。考案者の長谷川武次郎は、日本の伝統工芸である多色刷り木版による絵本を、江戸時代から続く和紙の縮緬加工を改良した新しい技術で、長谷川版のちりめん本を完成させました。
ジャポニズムそのものであるちりめん本は、当然のごとく外国人に大人気でした。ちりめん本は日本国内ばかりでなく、海外へ輸出されるようになりました。英語版以外にはドイツ語版、フランス語版、スペイン語版やポルトガル語版などを次々に出版し、輸出ばかりでなく海外の出版社との共同出版も行いました。
ちりめん本で最も多く出回ったのは英語版でした。その中でもJapanese Fairy Tale Series.(日本昔噺集)は、20冊のセットとして大変人気を博したようです。翻訳はタムソン、ジェイムズ夫人をはじめヘボン式ローマ字を創始したJ.C.ヘボン、日本古典文学研究の大家B.H.チェンバレン、英語の教師として来日し、日本に関する随筆等を英文で発表、後に帰化して小泉八雲となったラフカディオ・ハーンなどが当たりました。
こうしてちりめん本は、ジャポニズム・ブームの後押しにより、日本文化を世界に紹介していったのです。