小泉八雲とちりめん本

■ 小泉八雲とちりめん本

長谷川武次郎は、1898年(明治31年)から小泉八雲の5冊の怪奇的な昔噺をちりめん本のシリーズに加えました。
出雲時代以来、節子夫人の語る昔噺や伝説に耳を傾けた八雲は、こうして得られた豊富な民間伝承を文学の素材として見事に活用したのです。その成果は八雲が発表した数々の英文随筆集などを通じて、20世紀初頭の欧米やインド、東南アジアなどの世界中の読者の興味をひきつけ、日本に対する関心を高める上で大変効果的でした。
一般に八雲の作品の多くは大人向けで、ほとんどの作品は、まず英語圏で出版されました。しかしその中でもこの五冊の民話絵本は例外としてあげることができるでしょう。なぜならこの五冊すべてが日本で出版され、子どもを含む家族全員が楽しめる作品として誕生したからです。
八雲の昔噺は、後に帙入りの大判五冊のセットとして生まれ変わり、長く版を重ねたのでした。