西洋の日本観

1. アウグスティヌス『神の国』 1475年

AUGUSTINUS, Aurelius. De Ciuitate dei. Venice, Nicolas Jenson, 1475. / Folio. HC*2051; BMC V.175; Goff A-1235.


アウグスティヌス『神の国』 1475年


 紀元430年に世を去ったヒッポの司教、アウグスティヌスの主著。中世においても広く読まれたこの教父の著作は、キリスト教の本質が問われた近代初期においても変わらぬ権威でした。十五世紀の印刷本の中でも、『神の国』は重要なレパートリーとなっています。スビアコのスヴァインハイムとパンナルツが上梓した1467年版が最初のものにあたり、この1475年版は、当時最大の出版都市ヴェネツィアで刊行された第二の板となったものです。

 印刷者、ニコラ・シャンソンはフランス、ソムヴォワール出身。シャンソンの優美なローマン体活字は有名ですが、これと共通する優雅な曲線をもつゴシック(ロトゥンダ)活字で印刷された『神の国』にも、均衡のとれた様式美を見出すことができるでしょう。

 写真は本文冒頭。最上部には「フランスのニコラ・シャンソン」とみずからの名前を掲げています。各章の最初の文字部分に余白があるのは、ここに装飾的な大文字を書き込むことができるようにしたものです。展示本には彩色は施されていませんが、この種の大文字装飾は中世写本では一般的でした。初期印刷本におけるこのような配慮は、その後木版の大文字が普及することによって失われていきます。