西洋の日本観

3. トリテミウス 『教会書目』 1494年

TRITHEMIUS, Jphannes. Liver de scriptoribus ecclesiasticis. Basel, [Jphann Amerbach], 1494. / 4to. HC*15613; Goff T-452; BMC III. 755.


トリテミウス 『教会書目』 1494年


 中世において書物がいかに貴重なものであったかは、想像に難くありません。必要な書物は所蔵者から借り受けて筆写する、という過程のなかで、読者が一生をかけて目にしうる書物の数はおのずから限られていました。この世に現存する著作、あるいは見聞した著作の目録なるものはすでに写本時代から幾つもの試みがありますが、ヨハネス・トリデミウスがここで成した仕事は、近代最初の書誌と呼ばれるにふさわしい内容となっています。

 タイトルからは一見、キリスト教に関する文献目録という印象を与えるものの、ブラントやダンテなど俗人の著作家も含む、総計約七千に及ぶ著作がしるされています。もとより簡略な記述のなかにそれぞれの本が活字となっていたかは伺うことができないものの、印刷技術の伝播とそれにともなう本の大量生産がこのような書誌を可能としたともいえるでしょう。トリデミウスは1483年から1505年までスボンハイムで修道院長をつとめ、この間わずか四十八冊の修道院の蔵書を二千冊に及ぶ大コレクションとしたと伝えられます。このスボンハイムの蔵書は当時多くの人文主義者をひきつけ、かの地はドイツにおける新たな学芸運動の中心となっています。