西洋の日本観

47. パジェス 『日本キリシタン史』 1869-70年

PAGÉS, Leon. Histoire de la religion cherétienne au Japon depuis 1598 jusqu'à 1651. Paris, Charles Douniol, 1869-70./ 8vo, two volumes. Cordier BJ541 ; Laures 792.


 『日本キリシタン史』 1869-70年


  十九世紀のヨーロッパで、東洋研究の中心地はパリでした。アンクティル=デュペロンの記念碑的なペルシャ研究をはじめとして、アベル=レミュザやスタニスラス・ジュリアンの中国学、ユシュヌ・ビュルヌフのインド学など、その輝かしい業績には枚挙の暇がありません。しかし、1795年に創立されたフランス東洋語学校にようやく日本語科ができたのは1868年のことであり、日本研究はこの時期に至るまで、フランス東洋学の伝統の中ではあくまで周縁的な存在でした。この日本語科で最初に教鞭をとったのは、幕末日本の遣欧使節に案内役として随行したレオン・ド・ロニでしたが、本書の著者レオン・パジェスは、当時自他ともに認める日本研究の泰斗であったがために、ロニの選任にはいささか失望を禁じ得なかったと伝えられています。

 1814年パリに生まれたパジェスは、日本に関する最初の本格的な欧文文献の書誌を作成する(1859年)など、近代的な日本研究の先駆者とみなされます。彼が計画した四巻からなる大著『日本誌』のうち、1598年から1651年の歴史を描いた第三巻が本書にあたるものの、他の巻は刊行に至りませんでした。

邦訳:吉田小五郎訳『日本切支丹宗門史』(東京・1938-40) (岩波文庫:192.1/P15)