西洋の日本観

19. ヴァレニウス 『日本王国誌』 1649年

VARENIUS, Bernardus. Descriptio regni Iaponiae. Amstelodami, apud Ludovicum Elzevirium, 1649. / 16mo. Pagès 278; Cordier BJ368-9; Laures 451-2.


ヴァレニウス 『日本王国誌』 1649年


 十七世紀屈指の出版業者、エルゼヴィル家の刊本。エルゼヴィルは、美しい活字による(当時としては)正確な印刷と、片手に収まる程の極めて小型の書物で知られ、アムステルダムのローデヴェイク・エルゼヴィルが上梓した本書もその一例です。

 ヴァレニウスは生没年未詳。翌年同じくエルゼヴィルから出版された『一般地理学』と本書とによって知られるのみです。著者はここで、主としてフランソワ・カロンの優れた日本論『日本大王国誌』に依拠しながら、マフェイ、リンスホーチン、マーチリーフ、ザヴィエルの書簡などの史料を加えて論じています。カロンは1619年から足掛け十五年にわたり平戸の商館に勤務した日本通でした。カロンが残した『大王国誌』は三十項目の質問に答えるかたちで、簡潔にしかも短期間に書かれたものながら、日本の実情を具さに観察した記録として当時の日本観を一新する貴重な文献でした。ケンペルの『日本誌』がのちに登場するまでカロンの記述は標準とみなされることとなります。1645年イサーク・コメリンの編著に収録され、三年後の1648年単独で刊行、その後カロンの生前だけでも数版を重ね、英訳・仏訳・独訳も相次いであらわれています。幸田成友の考証によれば、ヴァレニウスはカロンのテクストとして1645年のコメリン本を用いており、大名の氏名・石高が省略なくすべて記載されています。

邦訳:宮内芳明訳『日本伝聞記』(東京・1975)