西洋の日本観

24. マレー 『世界誌』 1683年

MALLET, Allain Manesson. Description de l'univers, contenant les différentes systemes du monde, les cartes générales & particulieres de la geographie ancienne & moderne: les plans & les profils des principales villes & des autres lieux plus considerables de la terres; avec les portraits des souverains qui y commandent, leurs blasons, titres & livrées : et les moeurs, religions, gouvernemens & divers habillemens de chaque nation. A Paris, chez Denis Thierry, 1683. / 8vo, five volumes.


マレー 『世界誌』 1683年-01マレー 『世界誌』 1683年-02


 アラン・マネソン・マレー(1630-1706)はもとフランスの軍事技術者。ポルトガル王に仕えたのち母国でルイ十四世の数学侍講となっていますが、本書のほか軍学書 Les Travaux de Mers (1671)が知られています。

 この『世界誌』は天体論にはじまり地球全体の地理を概説したのち極地地方(第一巻)、アジア(第二巻)、アフリカ(第三巻)、そしてヨーロッパ・アメリカ(第四・五巻)各国の地理・風俗を詳細に記しています。総計六百八十四点にも及ぶ挿画は当時のヨーロッパ人が抱いていたイメージを如実に伝えるものとして貴重。例えば第二巻で一章を割かれている日本の項では、エキソティックな山谷のかなたに見える江戸や京都の遠景はともかく、ゴシック教会の中に安置された大仏像、邪教の雰囲気を漂わせる阿弥陀如来像、あるいはトルコ風の衣裳をまとった将軍など、実証的正確さにはもとより遠いものながら、十七世紀末における極東の小国がどのように理解されていたか、その答をここに見出すことも不可能ではありません。なお日本の章の本文はモンタヌスに、中国はタッパー、キルヒャー、あるいはダヴィティなどに依拠しています。